はじめに
金融・経理分野でキャリアアップを目指す20代・30代の皆様、日々の業務お疲れ様です。簿記やFP(ファイナンシャルプランナー)といった資格取得は、この分野でのキャリアの第一歩として非常に有効です。しかし、現代のビジネス環境は急速に変化しており、特にIT化の波は金融・経理業務にも大きな影響を与えています。そこで本記事では、これまでの知識や経験を土台にしつつ、さらに市場価値を高めるための「リスキリング」に焦点を当て、具体的なキャリアパスをご提案します。ITスキルと金融・経理知識を掛け合わせることで、あなたのキャリアは新たなステージへと進化するはずです。
なぜ今、金融・経理分野でリスキリングが必要なのか?
従来の金融・経理業務は、手作業でのデータ入力や書類作成が中心でした。しかし、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、クラウド会計ソフトなどのテクノロジーが進化し、これらの業務は劇的に効率化されています。例えば、請求書の発行や経費精算、さらには月次決算の一部までが自動化されつつあります。
このような変化は、単に業務が楽になるというだけでなく、私たちに求められるスキルセットの変化を意味します。ルーチンワークをテクノロジーに任せられるようになることで、私たちにはより高度で専門的な業務、そしてテクノロジーを使いこなす能力が求められるようになるのです。具体的には、以下のような理由からリスキリングの重要性が増しています。
- 業務の高度化・専門化: 定型業務が自動化されることで、より戦略的な分析、経営意思決定への貢献、リスク管理といった高度な業務に集中できるようになります。
- テクノロジーへの適応: 新しい会計ソフトや分析ツールの導入は不可欠です。これらのツールを使いこなし、データを活用できる人材が求められています。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進: 企業全体のデジタルトランスフォーメーションが進む中で、経理・財務部門もその推進役となることが期待されています。
- キャリアの多様化: 従来の経理・財務担当者という枠を超え、データアナリスト、ITコンサルタント、フィンテック関連職など、活躍の場が広がります。
金融・経理分野のキャリアを深めるリスキリングの具体例
では、具体的にどのようなスキルをリスキリングで習得すれば、金融・経理分野でのキャリアアップにつながるのでしょうか。簿記やFPの知識を基盤に、以下の分野でのリスキリングを検討してみましょう。
1. データ分析スキル
現代のビジネスにおいて、データは「新たな石油」とも呼ばれるほど重要視されています。金融・経理分野では、売上データ、顧客データ、市場データなど、膨大な量のデータが日々生成されます。これらのデータを分析し、経営戦略の立案やリスク予測、不正検知などに活用できるスキルは、非常に価値が高いです。
- 習得すべきスキル: Excel(高度な関数、ピボットテーブル、マクロ)、SQL、Python(データ分析ライブラリ: Pandas, NumPy)、BIツール(Tableau, Power BI)
- キャリアパス例: データアナリスト、経営企画、財務アナリスト、リスクアナリスト
2. ITインフラ・システム理解
経理・財務システムは、企業の基幹システムです。ERP(統合基幹業務システム)やクラウド会計システム、会計事務所が利用する会計ソフトなど、これらのシステムがどのように構築され、どのように運用されているかを理解することは、業務効率化やシステム導入・改善の際に役立ちます。また、情報セキュリティの基本的な知識も重要です。
- 習得すべきスキル: クラウドサービス(AWS, Azure, GCPの基本)、ERPシステムの概要、会計システムの知識、情報セキュリティの基礎
- キャリアパス例: システム担当者、ITコンサルタント(経理・財務領域)、DX推進担当
3. プログラミングスキル(業務自動化・効率化)
Pythonなどのプログラミング言語を習得することで、日々の定型業務を自動化するツールを作成したり、複雑なデータ処理を効率化したりすることが可能になります。例えば、Excel VBAよりも高度な自動化や、Web APIを利用したデータ取得・加工などが実現できます。
- 習得すべきスキル: Python(基本的な文法、データ処理)、RPAツールの活用
- キャリアパス例: 業務改善担当、ITスペシャリスト、フィンテックエンジニア(バックオフィス領域)
4. デジタルマーケティング・フィンテック知識
金融業界全体がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中で、フィンテック(FinTech)への注目は高まる一方です。決済システム、資産運用、保険など、様々な分野でテクノロジーを活用した新しいサービスが登場しています。これらの動向を理解し、自社のビジネスや経理・財務戦略にどう活かせるかを考える視点も、キャリアの幅を広げるでしょう。
- 習得すべきスキル: フィンテックの動向、ブロックチェーンの基礎、API連携の知識、デジタルマーケティングの基礎
- キャリアパス例: フィンテック関連職、新規事業企画、デジタル戦略担当
リスキリングを成功させるためのポイント
リスキリングは、単に新しいスキルを学ぶだけでなく、それを実務にどう活かすかが重要です。成功させるためのポイントをいくつかご紹介します。
- 目標設定を明確にする: なぜリスキリングを行うのか、どのようなキャリアを目指すのかを具体的に設定しましょう。
- 段階的に学ぶ: 一度に全てを習得しようとせず、まずは興味のある分野や業務に関連性の高いスキルから段階的に学びましょう。
- 実践の機会を作る: 学んだスキルは、実際の業務で積極的に使ってみることが定着への一番の近道です。社内で改善提案をしたり、副業で試したりするのも良いでしょう。
- 情報収集を怠らない: IT技術や金融業界の動向は常に変化しています。セミナー参加、書籍、オンライン記事などで最新情報をキャッチアップしましょう。
- コミュニティを活用する: 同じ目標を持つ仲間と情報交換をしたり、モチベーションを維持したりするために、オンラインコミュニティなどを活用するのも有効です。
まとめ
簿記やFPといった伝統的な資格に加え、データ分析、ITシステム、プログラミング、フィンテックといった分野でのリスキリングは、金融・経理分野でキャリアアップを目指す皆様にとって、今後ますます重要になってきます。これらのスキルを習得することで、単なる「数字を扱う専門家」から、企業の成長をデータとテクノロジーで支える「戦略的なビジネスパートナー」へと進化できる可能性が広がります。ぜひ、ご自身のキャリアプランを見直し、リスキリングに挑戦してみてください。未来のキャリアは、あなたの学び続ける姿勢によって大きく開かれます。

